塞翁失馬、焉知非福

語学とか釣りとか

試験の時に持ち込む時計は、置時計にしない方が良い

1月も終わりが近づき、入試を始め様々な試験が行われる時期になりましたね。試験の時は時計の持ち込みが許可されていることが多く、大抵の人は腕時計を持っていきますよね。ただ、中には置時計を使う人もいます。
私は昔から、重要な試験の際には置時計を持っていくことにしていました。深い理由はありませんが、置時計だと時間を見る際にわざわざ時計を手で持つ必要が無い分、腕時計と比較して時間の確認が楽なんです。

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(暗黙の了解で)腕時計しか認めれていない場合がある

上述のように私は腕時計よりも置時計の方が好きなのですが、一度そのおかげで非常に困ったことがありました。複数日に渡って行われる、とある国家資格の試験を受けたときのことです。初日、私は置時計と共に腕時計も持っていきました。受験要領には時計に関する記述は特にありませんでしたが、置時計の使用が禁止される場合ももしかしたらあるかもしれないと思ったので、念のため腕時計も持って行ったのです。しかし特に注意されることも無く、無事に初日の試験が終わりました。

問題は2日目の最初の試験に起きました。2日目は置時計のみ持って行きました。初日の経験から、置時計でも大丈夫なんだと思ったからです。持って行ったのは初日と同じ、5cm×5cm×3cmくらいの小さな置時計です。最初の試験の説明が行われ、問題用紙と解答用紙が配られ、試験開始まであと数分となった時、一人の試験官が私に近づいてきました。

試験官「置時計は鞄にしまってください。」
私「え?置時計はダメですか?」
試験官「はい。」
私「あの、時計これしか持ってないんですけど……。」
試験官「そうですか。でも腕時計しか認められませんので、しまってください。」

私はかなり動揺しました。試験室には掛け時計もありませんでしたから、置時計を使わないということは、時計を見ないで試験を受けるということです。試験は2時間近くあるので、時間配分のミスは大きな失点に繋がります。問題数が多く、私はいつも時間ギリギリまで掛かってしまいます。私にとって、時計なしというのは致命的でした。「腕時計が良くて置時計が駄目なんて、どこにも書いてませんでしたよ。」「昨日は使っていても何も言われませんでしたよ。」そんな言葉が一瞬頭をよぎりましたが、そんなことを言っても無駄なのは分かっていました。その試験官がわざわざ言ってくるのだから、きっと明確に禁止されているのでしょうし、前日はたまたま気付かれなかっただけなのでしょう。置時計を使うのは諦めて、何とか出来るだけ良い条件で試験を受けられるよう交渉することにしました。

「見える位置に掛け時計とか付けてもらえませんか?」
「できません。」
「30分おきに時間を黒板に書いてもらうとかはできませんか?」
「できません。経過時間のアナウンスは開始○○分後と終了○○分前のみです。」(※正確な数字は忘れました)
「じゃあ、途中で僕が手を挙げて、試験官の方にその時の時刻を教えてもらうというのは出来ますか?」
「……確認してきますので、ちょっと待ってください。」

試験官はその場を離れ、総監督らしき人の所へ行って相談を始めました。試験監督業務には普通対応マニュアルというものが存在し、一人ひとりの試験官がその場で臨機応変に自分で考えて行動するということは基本的にしません。受験生がトイレに行きたいと言った場合、遅刻してきた受験生がいた場合、問題文に関する質問を受けた場合など、事前に考えられる場合についてどう対応すべきかが決められており、それ以外の場合は総監督に相談し、それでも対応が決まらない場合は本部に連絡するなどします。すべての受験生が平等に試験を受けることが出来るよう、試験監督業務というものは出来るだけマニュアル化しておくものです。そして、「受験生が試験中に経過時間を聞いてきた場合」というのはマニュアルには無かったのでしょう。そのため、総監督らしき人はどう対処するか考えなくてはなりませんでした。

この間の時間は多分1分かそこらでしたが、私には非常に長く感じられました。返答を待つ間、必死に動揺を抑えようとしました。「最悪の場合、時計なしで試験を受けることになるかもしれない。そこは覚悟を決めよう。いつもギリギリまで掛かると言っても、時間内に終わらなかったことは無い。普通に解けば時間内には終わるだろう。分からない問題に時間を掛けすぎるのだけは厳禁だ。迷う問題が出たら、印を付けて次に進むのを徹底しよう。全問解き終わってから2周目に考えれば良い……」そんなことを考えながら、試験官が来るのを待ちました。

やがて相談を終えた試験官が戻ってきました。彼女が言うには、手を挙げて時刻を聞けば、紙に書いて教えることが出来るとのことでした。これで最悪の事態は避けることが出来ました。普通に時計を見るのと比較すれば若干のタイムロスがあるとは言え、好きなときに経過時間を知ることが出来るのはかなり助かります。

試験開始の合図が出され、私は問題を解き始めました。何ページか問題を解き、切の良いところで時間を聞くために手を挙げました。それに気付いた試験官の一人が私に後ろから近付き、小声で用件を聞きます。私も小さな声で「今の時間を知りたいのですが……」と答えます。試験中は静穏を保つため、会話は必要最小限を小声で行い、可能なら筆談になります。試験官は時計を見て時刻を紙切れに書き、後ろから私の机の上に置いて去っていきました。この一連の作業に掛かる時間は大体20秒くらいだったと思います。私はこの時間を勿体無いなあと思いつつも、経過時間を知ることの出来るメリットの方がはるかに大きいので、仕方ないくらいに思っていました。試験官の方もこの時間が勿体無いと思ったのか、気を利かせて3回目くらいから私が手を挙げただけで何も言わずに後ろから紙切れを置いて去っていくようになりました。おそらく試験官は親切で時間短縮のためにそうしてくれたのでしょうが、私は却って不安になりました。受験生が手を挙げる目的は、トイレに行きたい、筆記用具を落とした、問題冊子に乱丁があるなど様々です。もし私がそれらの理由で手を挙げたとしても、試験官は後ろから近付いて時刻を書いた紙だけを置いて去っていこうとするでしょう。「そうじゃないんです。待ってください。」そう呼びかけて試験官を引き留めなくてはなりませんが、静かな試験場ですぐ近くに何人もの他の受験生が試験を受けている状況で、後ろを振り向いて試験官を呼び止めるのはちょっと勇気のいることです。結局、時刻以外の理由で試験官を呼ぶことはせずに済みましたが、本来不要なことで頭を悩ませなくてはならなくなったのは嫌でした。変に気を利かせず、実直に毎回用件を聞くところからやってほしかったです。

試験終了間近、多分残り2分くらいでしょうか、私は見直しの最中、ある問題で、すでにマークした選択肢とは別の選択肢を選び直したくなりました。私は悩みました。「まだ時間あるよな。直す時間くらいはある。でももし消してから書くまでの間に終了の合図があったらどうする?すぐに鉛筆を置かなくては即座に不合格だ。それだけは避けないと。でも書かずに鉛筆を置いたら、この問題は確実に落とすことになる。そもそも本当に直すべきかどうかも分からないのに。手を挙げて時間を聞くか?でもそんなことをしている間に試験終了になるかも。」悶々と悩んだ末、私は修正を行うことに決め、急いですでに書いたマークを消し、新たな選択肢にマークを書きました。10秒も掛からない作業なので、何の問題も起きませんでしたが、これだけのことに本当に無駄なエネルギーを消費しました。手元に時計さえあれば何も悩む必要は無かったことでした。

2日目の最初の試験が終了し、昼休みに近くのコンビニで腕時計を購入し、その後の試験は時計を見ながら受験することが出来ました。最終的に、私は試験に合格し、無事に資格を取得できました。もしこれが不合格だったら、本当に悔やんでも悔やみきれなかったと思います。試験中何度も時刻を教えてくれた試験官には、感謝する気持ちもあり、また仕事を増やしてしまい申し訳ない気持ちもあります。

くれぐれも置時計のみを持って試験に臨まないように

長々と私の体験談を書いてきましたが、どうかこれを読んだ方も置時計のみで試験に臨まないように気を付けてください。置時計でも大丈夫な試験も多いとは思います。ただ、今回の私のように、受験要領などで明示的に禁止されていなくても当日試験場で注意を受けてしまうこともあります。とりわけ、国家資格系の試験は全部同じような条件だと考えておいた方が安全だと思います。